要約の技術——クライエントの言葉を借りて返す

面談の技法として「要約」を教わったとき、多くの方は「話を整理してまとめて返すこと」と理解したはずです。間違いではないのですが、実務で要約がうまく働くかどうかは、もう一歩踏み込んだところで決まります。それは、誰の言葉でまとめるか、です。
たとえばクライエントが、職場の人間関係や仕事量の話を続けたあとに「もう、なんだか疲れてしまって」と語ったとします。これを「バーンアウト気味ということですね」と返すのと、「なんだか疲れてしまった、と」と返すのとでは、クライエントに届くものが違います。前者は支援者の言葉への置き換えであり、ときに「そういうことじゃないんだけど」という小さなずれを生みます。後者はクライエント自身の言葉のお返しであり、「そうなんです、疲れてしまって……実は」と話が続いていく入り口になります。
要約の実務で心に留めておきたいことを3つ挙げます。
1つ目、キーワードはクライエントの言い回しのまま使うこと。 「疲れた」を「消耗」に、「モヤモヤする」を「不全感」に言い換えない。専門的な言葉に直すほど、クライエントの実感から離れていきます。
2つ目、要約は短くていいと知っておくこと。 長い話を全部まとめようとすると、要約そのものが長い演説になります。心に残った言葉を1つか2つ、そのまま返すだけでも、要約の働きは十分に果たされます。
3つ目、要約のあとに確かめること。 「——という感じでしょうか」「合っていますか」と軽く添えて、クライエントに修正の余地を渡します。要約は当てにいくものではなく、二人で合わせにいくものです。ずれていたら、クライエントが直してくれます。「いや、疲れたというより、虚しいんです」——この修正の中にこそ、クライエントの実感が現れます。直しの言葉こそ、面談を先に進める材料になるのです。
要約が決まると、クライエントは「この人は分かろうとしてくれている」と感じ、話が深まります。決めにいくのではなく、借りて返す。この順序を、私たちも折に触れて確かめたいところです。自分の面談の録音や逐語を見返す機会があれば、要約の場面だけを拾って、誰の言葉でまとめていたかを確かめてみるのも一つの方法です。
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