文字起こしの道具と守秘——便利さの前に確かめる3つのこと

面談や研修の録音を自動で文字にしてくれる道具が、手軽に使えるようになりました。記録づくりの負担が軽くなり、面談中はメモよりクライエントに集中できる——確かに便利です。
しかし、キャリア支援の面談は守秘義務のある場です。便利さの前に、確かめておきたいことが3つあります。
1つ目、録音と文字の記録はどこへ行くのか。 文字起こしの道具の多くは、録音した音声を手元の機器の外に送って処理します。つまり、クライエントの声と話の中身が、自分の手を離れた場所に一度保管される可能性があるということです。提供元の説明書きを読み、音声や文字がどこで処理され、どのくらいの期間保存され、誰が見られるのかを確認します。説明を読んでも分からなければ、面談への使用は見送るのが安全です。
2つ目、入力した内容がAIの学習に使われないか。 道具によっては、利用者が入力した内容を性能改善のための学習に使う場合があり、多くはその可否を自分で選べるようになっています。面談の内容を扱うなら、学習に使われない状態になっているかを、使い始める前に確かめます。
3つ目、クライエントの同意と、所属先のルール。 録音すること、文字にすること、その記録をどう保管しどう使うことを、面談の前にクライエントへ説明し、同意を得ます。断られたら使いません。また、企業や学校などの組織で活動している場合は、外部の道具に相談内容を扱わせてよいか、組織としての決まりを先に確認しておく必要があります。
なお、確認した結果に応じて、使い方を分ける道もあります。面談での使用は見送り、まずは自分一人の学習——研修の聞き直しや、自分の練習の振り返り——だけに使ってみる。クライエントの情報を含まない場面で道具の性質をつかんでから、面談に持ち込むかどうかを判断するという順番です。いきなり本番で使う必要は、どこにもありません。
3つとも確かめて、初めて「便利」が守秘と両立します。手間に思えるかもしれませんが、クライエントの話を預かる仕事の土台にかかわることです。確認は一度きちんとやれば済みますし、確かめた事実は、クライエントへの説明にもそのまま使えます。順序だけは、間違えないようにしたいものです。
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