守秘の実務——「話が漏れない」を仕組みで守る

守秘義務の大切さを疑うキャリアコンサルタントはいないでしょう。それでも、話が漏れる場面は「秘密を漏らそう」という悪意からではなく、日常の何気ない油断から生まれます。だからこそ守秘は、心構えに加えて、仕組みと習慣で守る必要があります。
具体的な場面で考えてみます。
話す場所。 面談を終えた直後、同僚との立ち話や移動中の会話で、つい面談の話題に触れてしまう。喫茶店や電車の中は、誰が聞いているか分からない場所です。事例について話すのは、そのための場(事例検討会やスーパービジョンなど、守秘の約束が共有された場)に限る、と自分の中で線を引いておくことが第一歩になります。
書いたものの扱い。 面談記録やメモ、印刷した資料。机の上に置いたまま席を離れる、鞄に入れたまま置き忘れる——漏えいの多くは、こうした物の扱いから起きます。記録は決めた場所以外に置かない、持ち出すときは名前を伏せる、使い終わったメモは細断する。一つひとつは地味ですが、決めておけば迷いません。判断を毎回その場でするのではなく、あらかじめ決めた手順に従う。守秘を意志の力だけに頼らないための工夫です。
家族や身近な人との会話。 「今日はこんな相談があってね」——家庭での何気ない一言も、守秘の枠の外に出る行為です。話の中身を支えてもらいたい気持ちは自然なものですが、その受け皿は身近な人ではなく、スーパービジョンや支援者仲間との守秘を約束した場に置くべきものです。疲れを分かち合うことと、事例の中身を話すことは、分けることができます。
そして、クライエントへの説明。 守秘は裏側で守るだけでなく、面談の最初にクライエントへ言葉で伝えることに意味があります。「ここでのお話は外に漏れません。ただし、あなたやどなたかの安全に関わる場合など、例外となる場合があります」。守られる約束と、その限界。両方を最初に示すことが、クライエントの安心と信頼の土台になります。
守秘は一度の大失敗より、小さな習慣の集積で決まります。ご自身の一日の動きを、記録の置き場所から帰り道の会話まで、一度なぞって点検してみてはいかがでしょうか。気になる箇所が見つかったら、その日のうちに扱い方を決め直す。それだけで、守秘は一段確かなものになります。
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