リファー(他機関への橋渡し)の考え方——抱え込まない支援

キャリアの相談を受けていると、キャリアの枠を越えた話題に出会うことがあります。心身の不調がうかがわれるとき。借金や法律の問題が語られたとき。家庭の事情が相談の中心になってきたとき。こうした場面で問われるのが、リファー——他の専門家や機関への橋渡し——の判断です。
まず確かめておきたいのは、リファーは「見放すこと」ではない、ということです。むしろ逆で、自分の専門の範囲を自覚し、範囲の外のことは適切な専門家につなぐのは、クライエントの利益を最優先に考えるからこその行動です。「せっかく自分を頼ってくれたのだから」と専門外の相談を抱え込むほうが、結果としてクライエントを危うくすることがあります。
実務での考えどころを3つ挙げます。
1つ目は、迷い始めた時点で検討に入ることです。 「自分の手に余るかもしれない」という感覚が芽生えたとき、それはすでに検討を始める合図です。確信が持てるまで待つ必要はありません。判断に迷うこと自体を、指導を受けている先輩やスーパーバイザーに相談することもできます。一人で決めなければならない、と思い込む必要はありません。
2つ目は、つなぎ先を平時から知っておくことです。 医療機関、地域の相談窓口、法律の専門家。いざという場面で調べ始めるのではなく、自分の活動地域や所属先にどんなつなぎ先があるのか、日頃から把握しておく。リファーの実力は、面談中ではなく面談の外で蓄えられます。手元にある窓口の連絡先の一つひとつが、いざという場面でクライエントを守ってくれます。
3つ目は、橋渡しの伝え方です。 「私では力になれません」と突き放すのではなく、「その部分は、この分野の専門家に相談できたほうが安心だと思います。キャリアのことは引き続き一緒に考えさせてください」と、つなぐ部分と続ける部分を分けて伝える。クライエントが「たらい回しにされた」と感じないための、大切な一言です。
そして、橋渡しをした後も、キャリアの面ではクライエントに関わり続けられる場合が少なくありません。つなぐことと、関わり続けること。この両方を持てるのは、私たちの仕事の強みでもあります。
すべてを自分で支えられる支援者はいません。つなぐ力も、支援の力のうち——そう考えると、リファーは少し違って見えてきませんか。
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