面談は終わったあとに仕上がる——記憶が消える前の「10分の振り返り」を型にする

面談を振り返ることの大切さは、養成講習で誰もが教わります。ところが実務に入ると、次の面談や別の業務がすぐに始まり、振り返りは後回しになります。夜にまとめてやろうとして、思い出せるのは面談の印象だけ——そういう経験は、経験年数を問わず珍しくありません。続かない原因は熱意の不足ではなく、「何を、どれだけ、いつ書くか」が決まっていないことにあります。
まず提案したいのは、量と時間を先に決めてしまうことです。面談直後の10分、書くのは3つだけ。 全部を振り返ろうとすると始められません。範囲を狭くすることが、続けるためのいちばんの工夫です。
1つ目に書くのは、クライエントが使った言葉そのものです。 要約ではなく、本人の言い回しのまま、2つか3つ。「もう遅いと思うんです」「あの部署では自分は要らない気がして」。要約すると「転職への不安」のような一般的な言葉に変わってしまい、次の面談で使えなくなります。クライエントの言葉づかいは時間がたつほど正確に思い出せなくなるので、直後に書く価値がいちばん高いのはこの部分です。
2つ目は、面談のなかの分岐点をひとつだけ選ぶことです。 「あそこは別の応じ方もあった」と引っかかっている場面を、ひとつに絞って書きます。そのとき自分が何を感じ、なぜその応答を選んだのか。うまくいった場面を選んでも構いません。なぜうまくいったのかを言葉にできれば、それは再現できる技術になります。大事なのは、良し悪しの採点ではなく、選択の理由を言葉にすることです。
3つ目は、次の一手です。 次回の面談で確かめたいこと、または自分の練習課題を、ひとつだけ書きます。「前半で沈黙を待てなかったので、次は問いかけのあとに間を取る」。ひとつに絞るのは、ここでも同じ理由です。課題が3つ並んだ記録は、読み返されなくなります。
書き残すときの注意がひとつあります。個人が特定される情報は書かないことです。 氏名はもちろん、勤務先や固有の経歴も、振り返りの目的には必要ありません。「40代・製造業・管理職」程度の抽象度で、振り返りには十分です。手帳でもノートでも様式は自由ですが、守秘の前提だけは崩さないでください。
続けるための現実的な目安も添えておきます。すべての面談で書く必要はありません。1日に1件、いちばん心に残った面談だけでも、1か月で20件前後の記録になります。そして月に一度、書いたものを読み返してください。同じ種類の分岐点で毎回引っかかっている、同じ練習課題を3週続けて書いている——読み返しではじめて見える繰り返しが、自分の癖です。
この記録は、自分のためだけのものではありません。スーパービジョンを受けるとき、事例検討会に出るとき、「どの面談を持ち込むか」「何を相談したいか」が記録のなかにすでにあります。10分の振り返りは、その場かぎりの反省ではなく、指導を受けるための素材づくりでもあります。
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