「AIが提示する情報の正確性や妥当性について判断することができる能力」——国が整理した“これから必要な能力”に、AIの項目が入っています

厚生労働省の「経済社会情勢の変化に対応したキャリアコンサルティングの実現に関する研究会」(座長・坂爪洋美 法政大学キャリアデザイン学部教授)が、2026年1月21日(水)に報告書を公表しています。今後のキャリアコンサルティングに必要な能力を整理した文書です。
このなかに「今後のキャリアコンサルティングに必要な能力」という一覧があります。企業領域・需給調整領域・教育領域といった活動領域ごとに、活動内容と「追加・強化が必要な能力」が並べられているもので、その【各領域共通】の表に、「AI等のデジタルツールを活用した支援」という活動内容が置かれています。
そこに挙げられている能力は、2つです。ひとつは「AI等のデジタルツールを活用したデータ分析やキャリアコンサルティングを行うことができる能力」。もうひとつが、「AIが提示する情報の正確性や妥当性について判断することができる能力」です。
今号でお伝えしたいのは、2つめのほうです。求められているのは「AIを使えること」だけではなく、「AIが出したものを、そのまま渡さずに判断できること」だと読めます。 しかもこれは特定の領域だけの話ではなく、各領域共通の欄に置かれています。企業で働く方も、人材紹介の現場の方も、学校の方も、対象に入ります。
実務に引きつけると、この「判断することができる能力」は、日々の小さな場面に現れます。制度の名称や要件をAIに尋ねたとき、その答えが今の制度と合っているか。求人や賃金の相場をAIに整理させたとき、その数字がいつの時点のものか。研修や資格の情報をAIにまとめさせたとき、実施機関の最新の案内と食い違っていないか。確かめる先を持っていて、確かめる習慣があるかどうか——能力として書かれているのは、おそらくそういうことです。
本紙は第3号(7月24日)で、相談の内容をAIに入力してよいのかという守秘義務の線引きを扱いました。あのときの論点は「何を入れるか」でした。今回の論点は、その裏側にある「何を出すか」です。入力の側は倫理綱領が判断の出発点になりますが、出力の側は、支援者自身が確かめるほかありません。
もうひとつ、あわせて押さえておきたいことがあります。この報告書は能力の整理であって、試験の出題範囲の変更を告げるものではありません。 12月13日(日)の技能検定や11月1日(日)の国家資格試験に、この項目がそのまま出るという話ではない点は、はっきり分けて受け止めておきたいところです。ただ、国がキャリアコンサルタントに求める能力の一覧に、AIに関する項目が独立して置かれた——という事実そのものは、これからの研鑽の方向を考えるうえで小さくないと思います。
報告書には概要版と本体、そして「今後のキャリアコンサルティングに必要な能力」の一覧が、それぞれPDFで公開されています。ご自身の活動領域の欄に何が書かれているかを一度確かめておくと、これから何を身につけるかの見取り図になります。
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