傾聴の「聴」の字に立ち返る——聞くと聴くの違いを、明日の面談で

「聞く」と「聴く」の違いは、キャリアコンサルタントなら養成講習の最初に教わることです。音が耳に入ってくるのが「聞く」、こちらから注意を向けて受け取りにいくのが「聴く」。「聴」という字には耳だけでなく目と心が入っている——そんな説明を受けた方も多いのではないでしょうか。
ただ、資格を取って実務に就くと、この違いは知識ではなく体力の問題になってきます。面談の中盤、クライエントの話が長くなってきたとき。次の質問を頭の中で組み立て始めたとき。「この方の主訴はこれだろう」と見当がついた気になったとき。私たちの「聴く」は、気づかないうちに「聞く」に落ちています。耳は開いているのに、注意はもう自分の考えのほうを向いているのです。
では、「聴く」に戻るにはどうすればよいか。実務の中でできる手がかりを2つ挙げてみます。
1つは、自分の内側の声に気づいたら、いったん脇に置くと決めておくことです。 面談中に「早く整理してあげたい」「それは違うのでは」という声が湧くのは自然なことで、湧くこと自体は止められません。問題は、その声に乗って話し始めてしまうことです。「いま自分の考えが動いたな」と気づけたら、それだけで注意はクライエントに戻りやすくなります。脇に置くとは、捨てることではありません。面談の後で検討すればよいことを、いまは保留しておく——その程度の構えで十分です。
もう1つは、面談の後に「聴けていなかった時間帯」を振り返ることです。 録音が残る練習の場であれば、自分の相づちが増えた箇所、質問が続いた箇所を探してみると、そこが「聞く」に落ちていた時間であることが少なくありません。面談中に完璧に聴き続けることは、経験を重ねた方でも難しいものです。落ちたことを責めるのではなく、落ちた場所に気づく——その繰り返しが「聴く」を育てていくのだと思います。
クライエントは、自分の話がどう受け取られているかに敏感です。言葉の内容より先に、「この人はちゃんと向いてくれているか」を感じ取っています。技法の引き出しを増やすことももちろん大切ですが、その土台にあるのは、この一文字の違いです。面談を終えた日に「今日は聴けていただろうか」と一度だけ問い直してみる。その短い問いの積み重ねが、聴く力を静かに育てていくのではないでしょうか。忙しい時期ほど、立ち返る価値があります。
キャリラボ——本紙の発行元が運営する、学びと練習の場所
キャリアコンサルタントをめざす方と有資格者のためのサイトです。学科・論述・面接の練習、講義動画、セミナーや相互のロープレ練習会まで。国家資格・技能検定2級/1級に対応。登録はメールアドレスだけ・1分で完了: