生成AIを「カウンセラー」と答えた人が1割超——令和8年版情報通信白書から、面談の前にAIと話している人たちを読む

総務省が2026年7月24日に令和8年版情報通信白書を公表しました。特集はAIです。ここに、キャリア支援の現場が押さえておいてよい数字がいくつか載っています。
まず、生成AIの利用経験率です。日本で「1種類以上の生成AIサービスを使っている(過去に使ったことがある)」と答えた割合は58.8%。 前年の調査では26.7%、その前は9.1%でした。ただし、この数字には注記が必要です。白書によれば、2025年度調査から新たに15歳〜19歳が調査対象に加わっており、20歳以上に限った利用率は52.2%です。前年との比較を語るときは、この注記まで含めて読むのが正確です。
次に、年代別です。日本では15歳〜19歳が91.7%、20代が78.2%、30代が56.3%、40代が49.0%、50代が44.2%、60代が33.5%。 若年層が高いのは想像どおりですが、注目したいのは40代・50代です。半数近くが使った経験を持っています。転職や役職定年、定年後の働き方といった相談で出会うことの多い年代が、すでにこの水準にあります。
そして、本紙が最も注目したのが次の項目です。「生成AIはどのような存在か」を尋ねた設問で、日本の回答割合は、機械・道具が38.3%、辞書・百科事典が28.9%、秘書・アシスタントが21.4%と続き、「カウンセラー」が12.9%、「先生・コーチ」が12.9%でした。参考までに、ドイツでは「カウンセラー」が43.3%の「機械・道具」に次ぐ2番目で41.0%、中国では38.1%です。
ここから実務に持ち帰れることを、3つに整理します。
1つ目は、初回面談で「これまでどこかにご相談されましたか」と尋ねるとき、相手を人だけに想定しないことです。 すでに一度、自分の状況を文章にして誰か(あるいは何か)に説明している方がいます。そのとき本人が何を書いたのか、どんな答えが返ってきて、何が納得できなかったのか。そこには、面談の入口として使える材料があります。相談に来たということは、返ってきた答えでは足りなかったということでもあります。
2つ目は、持参された文章の背後を確かめることです。 職務経歴の整理や自己分析の結果を、きれいに整った文章で持ってこられることがあります。整っていること自体は問題ではありません。確かめたいのは、その文章のどこが本人の実感と一致していて、どこが「そう書いてあるだけ」なのか、という点です。「この一文は、ご自身の感覚と合っていますか」と尋ねると、合っていない箇所から本人の言葉が出てきます。整った文章は、面談の終点ではなく出発点として扱えます。
3つ目は、この数字を専門職の役割が脅かされる話として読まないことです。 白書の数字が示しているのは、生成AIを相談の相手として捉えている人が一定数いる、という事実だけです。その人たちがそのあと人にも相談しに来るのか、来なくなるのかについて、この調査は何も語っていません。本紙も推測を述べません。確かなのは、相談という行為の入口が増えたということです。入口が増えた分、面談に来る方が持ってくるものの中身が変わり始めている——実務として意味があるのはこちらです。
数字の読み方について、注意も添えておきます。この調査はインターネットによるアンケートで、調査期間は2026年1月から2月、日本の有効回答数は1,236件、対象は10歳代から60歳代です(15歳未満と70歳代以上は対象外)。キャリア相談に限った調査ではありません。したがって「キャリアの相談をAIにした人が12.9%いる」という読み方はできません。あくまで、生成AIをどのような存在として捉えているかを尋ねた結果です。
そのうえで、この記事の結論はひとつです。白書の数字は、AIを使うべきか使わないべきかの根拠ではなく、面談の準備を変える材料です。 目の前の方が、面談の前にすでに一度言葉にしてきているかもしれない。その前提で最初の問いを用意しておく。それだけで、初回面談の入口はひとつ増えます。
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