注目第33回試験受験申請学科対策論述面接ロールプレイAIと雇用2026年(令和8年)9月18日 金曜日第6号
相談の技術

「自分のやってきたことは“実務”と言えるのでしょうか」——年数を数える作業が、その人の職業人生の値踏みになってしまうとき

現場のキャリア支援📖 約3分で読めます2026年9月11日 公開(第5号

キャリアコンサルティング技能検定の受検資格は、実務経験の年数で決まります。2級なら5年以上、1級なら10年以上が基本で、大学・大学院の単位や認定講習の修了、キャリアコンサルタント試験の合格によって、必要な年数が短くなる道もあります。

申請の時期になると、この年数を数える作業が生まれます。職務経歴を書き出して、どの期間がキャリアコンサルティングの実務にあたるのかを整理していく。手続きとしては事務作業です。ところが、この作業をしている人から「自分のやってきたことは、実務と言えるのでしょうか」という言葉が出てくることが、少なくありません。

この言葉が出たとき、返し方はだいたい2つに分かれます。ひとつは「大丈夫ですよ、それも実務です」と安心させる返し方。もうひとつは「その判断は公式サイトで確認してください」と情報に戻す返し方。どちらも間違ってはいませんが、どちらも、その人が言おうとしたことに触れないまま終わることがあります。

というのは、この問いは形が2つ重なっているからです。ひとつは要件の問いで、「この期間は受検資格の実務経験に含められますか」という事実の確認です。もうひとつは値踏みの問いで、「自分がやってきたことに、専門職としての中身はあったのか」という問いです。前者は調べれば答えが出ます。後者は、調べても出ません。

厄介なのは、この2つが同じ文で出てくることです。そして多くの場合、先に口に出るのは要件の問いのほうです。要件の答えだけを返して終えると、後者は口に出されないまま持ち帰られます。

そこで、まずどちらの問いなのかを分けて確かめることをおすすめします。「要件に入るかどうかを確かめたいのか、それとも、この経験をどう位置づけるかを整理したいのか」——このように聞くと、多くの方は後者を選びます。要件のほうは自分で調べればわかると、本当はわかっているからです。

そのうえで、値踏みの問いに入るときは、その人の職務経歴を“年数”ではなく“場面”で聞くほうが進みます。「この3年のあいだで、いちばん記憶に残っている面談はどれですか」「そのとき、あなたは何をしましたか」。年数は経験の量を表しますが、量を数えているかぎり、その人は自分を他人と比べ続けます。場面を語ってもらうと、そこに何をしたかが出てきます。専門職としての中身は、年数ではなく、その場面の側にあります。

もうひとつ気をつけたいのは、受検を勧める方向に話を寄せないことです。年数の確認から入った相談は、放っておくと「では受けましょう」に着地しがちです。しかしこの人が確かめたかったのは受検の可否ではなく、自分の来歴の意味でした。受けるかどうかは、その整理がついたあとで、本人が決めることです。支援する側が先に着地点を持ってしまうと、値踏みの問いは宙に浮いたままになります。

なお、要件の判断そのものについては、支援する側が「それは実務に入ります」と言い切らないほうが安全です。受検資格の判断は試験機関の領域です。 経験の整理には付き合い、要件の判定は公式の案内と機関への確認に返す。この線を引いておくことが、結果として相手を守ります。

申請期のこの相談は、資格の手続きの話に見えて、その人が自分の職業人生を振り返る数少ない機会でもあります。年数を数える手を止めて、場面を1つ聞いてみる。それだけで、この時期の面談の質は変わると思います。

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