注目第33回試験受験申請学科対策論述面接ロールプレイAIと雇用2026年(令和8年)7月24日 金曜日第3号
AIと実務

相談の内容をAIに入力してよいのか——守秘義務との線引きを、倫理綱領から考えます

キャリア支援とAI📖 約2分で読めます2026年7月24日 公開(第3号

面談記録の整理、報告書の下書き、研修資料の作成——AIを日々の業務に使うキャリアコンサルタントは、この1、2年で目に見えて増えました。それに伴って増えているのが、「クライエントの相談内容を、AIに入力してよいのだろうか」という問いです。使ってから不安になる方も、不安だから一切使わないと決めている方もいます。

この問いに答えるための新しい規則を探す必要はありません。判断の出発点は、以前からある守秘義務です。キャリアコンサルティング協議会が定める「キャリアコンサルタント倫理綱領」(令和6年1月1日改正)は、第5条で、業務に関して知り得た秘密への守秘義務を定めています。同条はさらに、スーパービジョンや事例・研究の公表に際して、相談者の承諾を得ること、個人情報とプライバシーの保護に十分配慮し、相談者や関係者が特定される不利益が生じないよう適切な措置をとることを求めています。事例を人に見せるときの規律が、AIに文章を渡すときにもそのまま判断の物差しになります。

このことを前提に、実務の論点は3つに整理できます。

1つ目は、個人が特定される情報を入力しないことです。 氏名や勤務先名を消せば足りる、とは限りません。「地方都市の従業員50名の食品会社で、経理を20年やって管理職になった女性」のように、事実の組み合わせで人が特定されることがあります。事例検討会に出すときと同じ水準で、名前を消すのではなく、特定につながる細部を抽象化してから使う。これが第一の線です。

2つ目は、入力した文章がどう扱われるかは、サービスと契約の条件によって異なるということです。 入力内容が事業者側でどう保存されるか、AIの改善に使われるかどうかは、同じ名前のAIでも契約の種類や設定によって違います。ここは「AIは危ない」「AIは安全」とひとくくりに言えない部分で、本紙も一般論として断定はしません。確かめる責任は使う側にあります。自分が使っているサービスの規約と設定を、一度だけでよいので自分の目で確かめてください。それが済んでいないうちは、抽象化した内容であっても慎重に扱うのが筋です。

3つ目は、組織のなかで支援している場合、組織の決まりが加わることです。 企業や学校に所属して、あるいは契約して支援を行っている場合、その組織の情報の取り扱いに関する決まりが、倫理綱領とは別にかかってきます。倫理綱領第5条も、組織における支援ではプライバシーに配慮した適切な対応を求めています。自分の判断だけで進めず、所属先・契約先にAI利用の決まりがあるかを確かめることが先です。

以上を、面談記録を整理したい場面の手順にすると、こうなります。①入力する前に、特定につながる情報を抽象化する。②使うサービスの規約と設定を確認済みにしておく。③組織のなかの支援なら、組織の決まりを確かめる。④迷ったら入力せず、なぜ迷ったかを書き残しておく。④が意外に大切で、迷いの記録は、勉強会やスーパービジョンでそのまま検討の素材になります。

最後にひとつ。この線引きは、AIを使わないための理屈ではありません。守秘義務は面談で聞いた話を人に漏らさないという意味にとどまらず、情報をどう扱うかを自分の言葉で説明できる、という専門職の構えを含みます。クライエントに「私の話はどうなるのですか」と聞かれたとき、AIの利用も含めて答えられる。その状態を先に作っておくことが、AIの時代の守秘義務の実務だと本紙は考えます。

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