AIに任せてよいこと・いけないこと——支援の中心は渡さない

AIをキャリア支援の仕事にどこまで使ってよいのか——迷っている方は多いと思います。使わないと決めてしまえば迷いは消えますが、時間を生み出せる場面まで手放すことになります。かといって、何でも任せてよいわけでもありません。全部を拒むのも、全部を任せるのも、どちらも極端です。必要なのは線引きであり、その基準は実はひとつに絞れます。
任せてよいのは、面談の外にある作業です。 業界や制度の下調べ。案内文や資料の下書き。面談記録の清書や要点の整理。研修資料の構成案づくり。振り返りのときに別の視点を出してもらうこと。これらはAIに手伝わせることで時間が浮き、その分をクライエントに向き合う時間に回せます。
任せてはいけないのは、クライエントとの間に起きることです。 具体的には次のようなことです。
クライエントを理解すること。目の前の人が何に迷い、何を大切にしているか——これは面談の場で、その人との関係の中でしかつかめません。
支援の方針を決めること。次の面談で何を扱うか、どんな選択肢を示すか。AIに意見を出させることはできても、決めるのは支援者です。判断の責任は、道具に移せません。
そして、面談そのもの。聴くこと、応えること、沈黙をともに過ごすこと。ここがキャリア支援の中心であり、この中心を渡してしまったら、それはもうキャリア支援とは呼べません。
見分けに迷ったら、こう問うてみてください。「これは、クライエントとの間に起きることか、それとも自分の机の上の作業か」。机の上の作業なら、任せて構いません。クライエントとの間のことなら、自分でやります。
もうひとつ、任せてよい作業にも共通の心得があります。AIが作った下書きや整理は、必ず自分の目で確かめてから使うこと。内容の誤りがないか、クライエントに関する情報の扱いは適切か。任せるのは作業であって、責任ではありません。出来上がったものに名前を載せるのは、いつでも支援者自身です。
AIを使いこなすというと、多くの機能を知ることだと思われがちですが、実際には逆です。任せない領域をはっきり決めている人ほど、安心して任せられる領域を広げられます。線を引くことが、使いこなすことの第一歩です。
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